Rainbow In The Dark (DIO) 和訳と解釈

お待たせしました。
「和訳と解釈」のシリーズ、今回はDIO1作目「Holy Diver」所収の「Rainbow In The Dark」です!
DIOといえば真っ先に名前があがるほどの有名曲。
"Rainbow In The Dark" by DIO
When there's lightning
You know it always brings me down
'cause it's free
And I see that it's me
Who's lost and never found
稲妻が光ると
いつも打ちのめされてしまう
だってそれは自由なんだ
そして私は知っている
自分は迷い子で決して見つからないことを
I cry out for magic
I feel it dancing in the light
It was cold
Lost my hold to the shadows of the night
大声で魔法を呼ぶ
光の中で踊っているような魔法
それは冷たく
私は夜の影たちへの力を失った
No sign of the morning coming
You've been left on your own
Like a rainbow in the dark
A rainbow in the dark
夜明けのしるしはない
お前は1人で打ち捨てられて
暗闇の虹のように
闇に浮かぶ虹
Do your demons
Do they ever let you go?
When you've tried
Do they hide deep inside?
Is it someone that you know?
お前の魔物たちはお前を自由にしてくれたか?
お前が何かを試した時、奥に隠れるのか?
それはお前の知っている誰かか?
You're just a picture
You're an image caught in time
We're a lie
You and I
We're words without a rhyme
お前はただの写真
時にとらえられた画像に過ぎない
みんな嘘なんだ、お前も私も
我らは韻のない言葉
There's no sign of the morning coming
You've been left on your own
Like a rainbow in the dark
Just a rainbow in the dark
Yeah!
夜明けのしるしはない
お前は1人で打ち捨てられて
暗闇の虹のように
闇に浮かぶ虹
そうさ
When I see lightning
You know it always brings me down
'cause it's free
And I see that it's me
Who's lost and never found
稲妻が光ると、いつも打ちのめされてしまう
だってそれは自由なんだ
そして私は知っている、自分は迷い子で決して見つからないことを
Feel the magic
I fell it floating in the air
But it's fear
And you'll hear it calling you beware
Look out!
魔法を感じる、宙に浮いているような
でもそれは恐怖
そしてお前は警告の声を聴くだろう
気をつけろ!
There's no sign of the morning coming
There's no sign of the day
You've been left on your own
Like a rainbow
Like a rainbow in the dark
You're a rainbow in the dark
Just a rainbow in the dark
No sign of the morning
夜明けのしるしはない
昼のしるしも
お前は1人で打ち捨てられて
虹のように
暗闇の虹のように
お前は暗闇の虹
ただの暗闇の虹
朝のしるしはない
この曲については、代表曲でもあるためネットで数多くの意見が出回っています。ここでも解釈を試みるつもりですが、「Rainbow In The Dark」とはどういう概念なのか、それがキーワードになりそうですね。
~~~~~
①When there's lightning
You know it always brings me down
'cause it's free
And I see that it's me
Who's lost and never found
稲妻が光ると
いつも打ちのめされてしまう
だってそれは自由なんだ
そして私は知っている
自分は迷い子で決して見つからないことを
「稲妻」は神の力の象徴なので、ここでもその意味でとることができますが、むしろ歌詞の中に出ている通り、不安定な状況に置かれた人間に相対する概念として捉えたほうがよさそうです。
~~~~~
② I cry out for magic
I feel it dancing in the light
It was cold
Lost my hold to the shadows of the night
大声で魔法を呼ぶ
光の中で踊っているような魔法
それは冷たく
私は夜の影たちへの力を失った
「魔法」は人間の英知かもしれません。「光の中で踊っているよう」でも実際には「冷たい」、というのは、太陽の光とは対照的です。人類は光を手に入れることで闇を恐れなくなった=夜を支配したわけですが、その力を失った、とは英知の使い方が間違っていたのでしょう。もしくは、その英知そのものが正しいものではなかったのかもしれません。(人間が知恵を手に入れ、間違った方法で使う、という考え方はユダヤ教・キリスト教の社会に広く見られます。イスラム教についてはよく知りませんが、旧約聖書を聖典の1つにしているので、そういう傾向を持つ可能性はあります。)
~~~~~
③No sign of the morning coming
You've been left on your own
Like a rainbow in the dark
A rainbow in the dark
夜明けのしるしはない
お前は1人で打ち捨てられて
暗闇の虹のように
闇に浮かぶ虹
さて、Rainbow In The Darkという言葉が出てきました。
この「暗闇の虹」とは何か。Holy Diverの「聖なる潜水夫」と同じくらい考えないといけませんね。
「虹」はノアの洪水の後で、もう2度と人類を滅ぼすような災害は起こさない、という神の契約の印として天にかけられたものです。
そこから希望の象徴であると同時に、すぐに消えてしまうことから「はかない望み」の象徴ともなりました。
暗闇に虹がかかっているとは明らかな希望ともとれるし、本来なら太陽がなければ生まれないはずの「はかない望み」が夜にかかっている、という点では、二重の意味で不安なものともとれます。すでに支配力を失っていることが、前の聯で示されているからです(「Lost my hold to the shadow of the night」の部分)。
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④ Do your demons
Do they ever let you go?
When you've tried
Do they hide deep inside?
Is it someone that you know?
お前の魔物たちはお前を自由にしてくれたか?
お前が何かを試した時、奥に隠れるのか?
それはお前の知っている誰かか?
ここでは悪魔と契約を結んだ人間のイメージが出てきます。
悪魔と言ったってさほど非現実的な物語ではありません。さきほど出てきましたが、間違って使われる知恵、もしくは邪悪な本能などの比喩でしょう。それに忠実に生きて、果たして心が解放されることがあったのかということ。
「お前の知っている誰かか?」とは、悪魔は人間の姿を借りて(人間をあやつって)仕事をする、ということかもしれません。
誰かの誘いに乗って道を踏み外してしまう、とは人間の世界によくあるでしょう。
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⑤ You're just a picture
You're an image caught in time
We're a lie
You and I
We're words without a rhyme
お前はただの写真
時にとらえられた画像に過ぎない
みんな嘘なんだ、お前も私も
我らは韻のない言葉
ここは難解ですね。中世の世界観と同じく、この世の現実は幻に過ぎず、向こう側に真実の世界があるという意味でしょうか。
また、どうも西洋では韻文は散文より高級なものという通奏概念があるらしいです。韻文は頭韻(最初の文字が同じか似た発音を持つ)や脚韻(最後の文字が同じか似ている)を持つ詩文、散文は韻を持たない日常の文章です。
「韻のない言葉」とは、所詮はこの世の生き物という定めから逃れられない人間の哀しみを表しているのかもしれません。そこから、また原罪という概念に戻っていきますね。原罪がなければ、この世とあの世は分かれなかったのですから。
~~~~~
⑥There's no sign of the morning coming
You've been left on your own
Like a rainbow in the dark
Just a rainbow in the dark
Yeah!
夜明けのしるしはない
お前は1人で打ち捨てられて
暗闇の虹のように
闇に浮かぶ虹
そうさ
繰り返しの部分なので省略。
~~~~~
⑦When I see lightning
You know it always brings me down
'cause it's free
And I see that it's me
Who's lost and never found
稲妻が光ると、いつも打ちのめされてしまう
だってそれは自由なんだ
そして私は知っている、自分は迷い子で決して見つからないことを
⑧Feel the magic
I fell it floating in the air
But it's fear
And you'll hear it calling you beware
Look out!
魔法を感じる、宙に浮いているような
でもそれは恐怖
そしてお前は警告の声を聴くだろう
気をつけろ!
同じフレーズの後で違う言葉が出てきました。
「魔法」が不吉なものである、という点がいっそう濃く出てきています。
~~~~~
⑨ There's no sign of the morning coming
There's no sign of the day
You've been left on your own
Like a rainbow
Like a rainbow in the dark
You're a rainbow in the dark
Just a rainbow in the dark
No sign of the morning
夜明けのしるしはない
昼のしるしも
お前は1人で打ち捨てられて
虹のように
暗闇の虹のように
お前は暗闇の虹
ただの暗闇の虹
朝のしるしはない
今までに出てきたのとほぼ同じ内容ですね。
~~~~~
全体を見てみると、どうも人間の原罪と孤独を歌ったものという印象が強いです。
ただ気にかかるのは、語り手の立場が微妙に変わっているらしいこと。
①②は当事者性が強く出ており、③④⑥はそれを外から眺めているような歌い方になっています。⑤は当事者でもあり、外から見ている存在のようでもあります。
⑦で再び当事者の独白らしき言葉に戻り、⑧は⑤と同じく、両方の性質を持っています。⑨で外からの視点にまた移ります。
この、「語り手の立場が変わる」というのはロニーの曲でわりと多くあるようです。(もとよりロニーの曲は、語り手の置かれたシチュエーションが分かりにくいものが多く、それが歌詞を難解にしています)
当事者性を残しつつ、あたかも外から警告を発しているようでもある。その警告が倫理的に「正」の方向を指し示していることが多い――この点に、人間の中にまぎれ込んだ人外の存在を感じることは可能だと思います。神からのメッセンジャーである天使かもしれません。
そこまで考えなくても、同じ人間であっても外部から警告を発することのできる「誰か」がいるなら、まるきり悲劇的な状況というわけでもないでしょう。「暗闇の虹」ははかない望みかもしれないけど、夜の世界に確かにかかっている望みなのかもしれません。
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tag : ロニー・ジェイムス・ディオヘヴィメタルハードロックDIOヴィニー・アピスジミー・ベインヴィヴィアン・キャンベルレインボー・イン・ザ・ダーク
深いですねぇ
出会い曲
概念を知ることができて良かったです、
繰り返し読みました。
「語り手の立場が変わる」というのは 私も思ってました。
ロニーの歌詞は本当に難解ですね。
ロニーの書斎の膨大な書籍、 そして読書家としての知識が 意味深い歌詞に表れているのではと思います。
ロニーは、レコーディング時にこの曲が気に入らなかったみたいですね、
ロニーのインタビューを読んで驚きました、破棄されなくて良かった~ライブでは マスト曲ですね。
「Rainbow In The Dark」は、ロニーとの出会い曲です。
この曲を初めて聴いた頃は、
QUIET RIOTのアルバム「 Metal Health」を「Kevin DuBrow って なんて歌が上手いの!」と 感激して毎日 聴いていたんですが…DIOの「Rainbow In The Dark」を聴いた瞬間、「Kevinより凄い!」(あくまでも私見です)と
ロニーがメインの音楽生活に~。
辛い事や嫌な事があっても ロニーが私の
Rainbowです。
次回も楽しみにしてます。
Re: 深いですねぇ
ロニーの歌詞は考え出すといくらでも意味が出てきそうです。この調子でほかの気になる歌詞も取り上げていくつもりです。
Rainbowという言葉のつながりについては私も考えました。ロニーにとって「虹」というモチーフが特別なものだったのかもしれませんね。
・・・
歌い手の立場が変わるという見解は、なるほど!レインボー時代から多いですねえ。ミュージカルの影響?難解です。
自分が、いかにちっぽけな存在か戒めてくれる歌詞のようです。ロニーはやはり「神」なのか・・・。
未来を示唆したような歌詞。こう考えるのもネガティブ過ぎたか・・・。 世界平和を祈りたい。
Re: 出会い曲
ロックというものが西洋発祥の音楽であり(アフリカ音楽とかに影響は受けていますが)、西洋は基本的にユダヤ/キリスト教文化圏なので、その視点から読み解いてもさほど的外れではないはずです。ロニー自身がどれほど信仰を持っていたかとは別に。
この曲が好きではなかったというのは割とよく知られていますね。ロニーの代表曲なので意外でした。
1曲が有名になってしまうと、その曲のイメージだけが広がってしまうからでしょうか。それでもライブのたびに演奏してくれるロニーは、本当にファン思いな人です♪
私もこの曲が、バンドとしてのDIOで聴いた初めての曲でした。(ロニーのキャリア全体では、おそらくBlack Sabbath時代の「Die Young」です。)曲が始まった瞬間になぜか「ロニーの曲だ!」とすぐ分かったのを覚えています。
Re: ・・・
ロニーは歌詞の中で「人間ではない何か」「人間を観察している何か」の立場に容易に転位することが多いみたいですね。それが神の視点を感じさせるのでしょう。
ネットを探すとRainbow In The Darkについての様々な解釈が見つかるので、それもいずれ紹介できたらと思っています。
この曲も、訳して考察してみると深いのですね。
ロニーはやはり深い詩を書きますね。
『RAINBOW』というのは文字通り在籍していたRAINBOWへの思い入れなのかも知れませんが・・・・・。
とは言え、私もこの曲大好きです。