TV Crimes (Black Sabbath)

DIOの後期作品の再発に続き、Black Sabbath時代のアルバム・Dehumanizerも再発との話。
そこで今回は同アルバムからTV Crimesを特集いたします❗
前からリクエストをいただいていた曲でもあるし、ちょうどいい機会なので。
TV Crimes by Black Sabbath
※翻訳は管理人によるものです
One day in the life of the lonely
Another day on the round about
What do they need
Somebody to love
孤独な人生のある1日
堂々巡りの別の1日
彼らが求めるのは
愛する誰か
One night in the life of the lonely
There's a miracle on the screen
What did they see
Somebody to love
孤独な人生のある夜
スクリーンに奇跡が映った
彼らが見たのは
愛する誰か
He guarantees you instant glory
Get your money on the line
彼はお前に即席の栄光を約束し
お前の危うい金を奪う
Gotta send me a plastic Jesus
There's a check in the mail today
That's what I need
Somebody to love
プラスチックのキリストを送っておくれ
領収書は今日届いたよ
それこそ私の
愛する誰か
We just won't meet on Sunday
Gotta buy him a limousine
Somewhere to live
Somewhere to pray
日曜日には決して会わず
彼にリムジンを買ってあげる
どこか生きる場所と
どこか祈る場所のために
Every penny from the people
Keeps the wolf outside the door
Shop around and find forgiveness for yourself
But he'll give you more, yeah
人々から集めた金が
ドアの外に狼どもを群れさせる
ショッピングでお前自身への赦しを見つけろ
でも彼はもっとくれる、そうさ
Holy father, holy ghost
Who's the one who pays the most
Rock the cradle don't you cry
Buy another lullaby
聖なる父、聖なる霊
一番支払ってくれるのは誰?
揺りかごを揺らし、泣くのは止めて
また新しい子守唄を買うんだ
Jack is nimble, Jack is quick
Pick your pocket, turn a trick※
Slow and steady, he's got time
To commit another TV crime
TV crime
ジャックは身軽に ジャックは素早く
お前のポケットをさらい、客を取る
ゆっくり確実に彼は時間を得た
別のテレビ犯罪に手を染めるために
テレビ犯罪
※turn a trickには「売春婦の」という意味もあり
One day in the life of the lonely
Back again on the round about
What do they need
Somebody to love
孤独な人生のある1日
また同じ日の繰り返し
彼らが欲しいのは
愛する誰か
One night in the life of the lonely
Another miracle on the screen
What did they see
Somebody to love again
孤独な人生のある夜
また別の奇跡がスクリーンに映る
彼らが見たのは
愛する別の誰か
A supermarket of salvation
Take a look inside the store
Shop around and find forgiveness for yourself
But he gives more
救済のスーパーマーケット
店の中を覗きこみ
ショッピングでお前自身への赦しを見つけろ
でも彼はもっとくれる、そうさ
Holy father, holy ghost
Who's the one who hurts you most
Rock the cradle when you cry
Scream another lullaby
聖なる父、聖なる霊
一番傷つけるのは誰?
お前が泣いたら揺りかごを揺らし
また新しい子守唄を叫ぶんだ
Jack be nimble, Jack be slick
Take the money, get out quick
Slow and steady, so much time
To commit another
TV Crime, TV Crime
ジャックは身軽に ジャックはずるく
金をさらい、さっと出ていく
ゆっくり確実にいくらでも
別のテレビ犯罪に手を染めるんだ
テレビ犯罪に
曲のテンポの速さもさることながら、怒涛の比喩の連発で出来上がっている歌詞ですが、なんとなく消費社会をやマスコミを風刺しているのは分かりますし、暗黒郷的な世界を描いているようにも見えますね。
90年代のロニーはディストピアをたびたび描いているんですよね。TV Crimesもそのひとつでしょう。
One day in the life of the lonely
Another day on the round about
What do they need
Somebody to love
孤独な人生のある1日
堂々巡りの別の1日
彼らが求めるのは
愛する誰か
One night in the life of the lonely
There's a miracle on the screen
What did they see
Somebody to love
孤独な人生のある夜
スクリーンに奇跡が映った
彼らが見たのは
愛する誰か
He guarantees you instant glory
Get your money on the line
彼はお前に即席の栄光を約束し
お前の危うい金を奪う
現代の孤独というやつでしょうか。
毎日毎日、同じ生活と同じ仕事の繰り返し。そんな無味乾燥な日々にあって、心の底から熱狂できる対象を求めている。
そこで出会うのがスクリーンに映る何者か。
「スクリーンに奇跡が映った」とは、マスメディアを通して与えられるカリスマ的な崇拝対象をよく表しています。
それは政治家、タレント議員、アイドル、宗教家、活動家、いろいろなものが考えられます。
「即席の栄光」もまた、いかにもな表現ですね。
そういうカリスマにくっついて、あたかも彼/彼女の主張が自分の言葉であるかのようにふるまう。そうすれば信奉者同士で親しくなり、孤独な感覚ではなくなります。
"世直し集団"として自尊心を満足させることもできるし。
Gotta send me a plastic Jesus
There's a check in the mail today
That's what I need
Somebody to love
プラスチックのキリストを送っておくれ
領収書は今日届いたよ
それこそ私の
愛する誰か
We just won't meet on Sunday
Gotta buy him a limousine
Somewhere to live
Somewhere to pray
日曜日には決して会わず
彼にリムジンを買ってあげる
どこか生きる場所と
どこか祈る場所のために
「プラスチックのキリスト」、見事な表現です。
プラスチックは「見せかけだけで中身のないもの」のシンボルと考えてよいでしょう(ニューシネマの時代にもそういう比喩がありました)。
さきに書いた、スクリーンに映るカリスマの数々はまぎれもなくプラスチック製のキリストに他なりません。
日曜日は教会に行く日ですから、その日に会わないということは信仰が失われている、あるいは伝統的な人間関係がない状態かもしれません。
「リムジンを買ってあげる」とは、信奉している対象に貢ぐこと。
生きる場所と祈る場所は、ともにその新しい"キリスト"が提供してくれるのです。
Every penny from the people
Keeps the wolf outside the door
Shop around and find forgiveness for yourself
But he'll give you more, yeah
人々から集めた金が
ドアの外に狼どもを群れさせる
ショッピングでお前自身への赦しを見つけろ
でも彼はもっとくれる、そうさ
Holy father, holy ghost
Who's the one who pays the most
Rock the cradle don't you cry
Buy another lullaby
聖なる父、聖なる霊
一番支払ってくれるのは誰?
揺りかごを揺らし、泣くのは止めて
また新しい子守唄を買うんだ
カリスマに乗せられた人々はお金(あるいは、指示という目に見えないお金)を貢ぎ、やがて危険な勢力を生み出します。
たとえば極右や極左の集団などを考えることもできるでしょうし、カルト団体全般もそうです。
ショッピングで罪の赦しを見つけろとは、コマーシャルにのせられていらないものまで買いまくる消費主義社会への痛烈な風刺ではないでしょうか。
そして神(=聖なる父)や聖霊までもが、どれほど得になるかという計算でしか信仰の対象とはなりません。精神の荒廃ですね。
「子守歌」が、心を安らかにするための何かであると考えると、それを買って手に入れるというのは、自分自身で安らぎを生み出す力がなくなっているのだと思います。
Jack is nimble, Jack is quick
Pick your pocket, turn a trick※
Slow and steady, he's got time
To commit another TV crime
TV crime
ジャックは身軽に ジャックは素早く
お前のポケットをさらい、客を取る
ゆっくり確実に彼は時間を得た
別のテレビ犯罪に手を染めるために
テレビ犯罪
※turn a trickには「売春婦の」という意味もあり
ジャックは男性一般を表す名詞であると同時に、アメリカの俗語では金、英国の俗語では警官・刑事の意味もあるとか。
ここではおそらく"スクリーンの神"に乗せられて金を貢ぎまくる人々の行動を、一種なにかに憑りつかれたような状態とみなし、その"憑りついているもの"を擬人化した存在をジャックと呼んでいるのではないでしょうか。
個人名も顔も持たない、でもしっかり存在している何者かです。
あるいは"スクリーンの神"そのものがジャックなのかもしれません。
TV Crimeはそのまま訳すとテレビ犯罪ですが、マスメディアを通して人の心が洗脳されていくことを表しているのだと思います。
あるいはそうやって洗脳された人間が犯す犯罪も、TV Crimesと呼んでいいかもしれません。
One day in the life of the lonely
Back again on the round about
What do they need
Somebody to love
孤独な人生のある1日
また同じ日の繰り返し
彼らが欲しいのは
愛する誰か
One night in the life of the lonely
Another miracle on the screen
What did they see
Somebody to love again
孤独な人生のある夜
また別の奇跡がスクリーンに映る
彼らが見たのは
愛する別の誰か
ほぼ同じフレーズが出てきました。しかし、始めにスクリーンに映った「愛する誰か」は、ここでは早くも飽きられているようです。
なぜなら、すでに「別の誰か」がそこにいるからです。
よくあるパターンですよね。
一時大騒ぎされた人も、ブームが過ぎればたちまち“あの人は今?”になってしまう。
たとえ現代の救世主のような人であっても同じです。
A supermarket of salvation
Take a look inside the store
Shop around and find forgiveness for yourself
But he gives more
救済のスーパーマーケット
店の中を覗きこみ
ショッピングでお前自身への赦しを見つけろ
でも彼はもっとくれる、そうさ
さきほどの部分で消費主義社会への風刺と書きましたが、これは一歩進んで現代の光景全般かもしれません。
救い主のような顔をした人(あるいは物)が、あたかも日用品を選ぶかのように目の前に並んでいる。
自分を救ってくれそうなものをいとも簡単に選び、そして簡単に捨て去る。
たとえば、大したポリシーもなく占いやスピリチュアルに夢中になって、自分では目覚めたつもりになっている。効果がなければすぐに別のものに乗り換える。
ドクターショッピングという言葉があります。かかる医師をころころ変えることですが、「救済ショッピング」みたいな行動もよく見られると思いませんか?
Holy father, holy ghost
Who's the one who hurts you most
Rock the cradle when you cry
Scream another lullaby
聖なる父、聖なる霊
一番傷つけるのは誰?
お前が泣いたら揺りかごを揺らし
また新しい子守唄を叫ぶんだ
泣いたときに揺りかごを揺らすのは、愛してくれる誰かではありません。自分自身です。
人間が自分自身をあやす光景というのは相当にグロテスクですね。
Jack be nimble, Jack be slick
Take the money, get out quick
Slow and steady, so much time
To commit another
TV Crime, TV Crime
ジャックは身軽に ジャックはずるく
金をさらい、さっと出ていく
ゆっくり確実にいくらでも
別のテレビ犯罪に手を染める
テレビ犯罪に
この部分はほぼ同じなので省略。
この曲は正直、記事を書いていてあまりの表現の巧みさに唸りました。思わずニヤリと笑ってしまいそうにも。
昔、映画監督のパゾリーニは現代社会におけるファシズムを風刺するために『ソドムの市』というウルトラ級の問題作を生み出しました。そこではかき集めた奴隷たち(=現代の人々の隠喩)に排泄物を食べさせるという形で、消費主義社会の退廃を告発しています。(この映画には様々な見方があるので、この解釈もまた一面に過ぎないかもしれませんが。)
「TV Crimes」もまた、別の形で現代の問題を扱っていると考えてよさそうです。"偽物の救済"を表す言葉が実に多様に使われていることに、皆様はすでにお気づきになったことと思います。
でも、実は管理人は、本当に現代の問題だけを歌った曲なのかどうかが疑問でもあります。
マスメディアがない時代から、現代のようにモノや情報が溢れていない時代から、人はずっと迷信やまじないに惑わされ、偽の救世主を信じ、何だか偉そうな人の言葉に右往左往してきたのではなかろうか。
ロニーがそこまで考えていたかどうかは分かりませんが、TV Crimesの歌詞の奥にはそんな視点も隠れているような気がしてならないのです。
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